「中国の台頭、アジアは激戦区へ」2007年のアート:国際編

2006/12/27 22:00

 

■2007年は国際美術展の前哨戦

2006年はアジアを舞台に、現代アートの国際展が相次いだ。
シンガポール・ビエンナーレ光州ビエンナーレ、上海ビエンナーレ
釜山ビエンナーレ台北ビエンナーレ。そして日本では、新潟で
越後妻有アートトリエンナーレが開かれた。

なぜ、こうした国際美術展がアジアに集中するのか?

これまでは万博や五輪によって、「国威」を示し、世界に認められる
よう、国々は競い合ってきた。それと同じ論理で欧米の大国と並ぶ
〝素晴らしい文化〟を持っているとてっとり早くアピールできるのが、
今や、ビエンナーレトリエンナーレといった国際美術展なのだ。

例えば、06年初開催となった、9月から11月にかけてのシンガ
ポールビエンナーレ。同時期にシンガポールでは、国際通貨基金
IMF)・世界銀行の年次総会が開かれた。
シンガポールビエンナーレは、旧市庁舎や国立図書館といった
公の建物が展示に使われ、オープニングには、リー・シェンロン
首相も駆けつける華々しさ。世界的に注目が集まるときに、国を挙げ
ての開催というタイミングは、決して偶然ではない。

ビエンナーレとは、2年に1度の意。2年後の2008年にまたアジアを
舞台にこれらの国際美術展が開かれることになる。さらに、日本でも
2008年には、3回目の横浜トリエンナーレが控えている。
開催時期が重なれば、人気アーティストの奪い合いにもなるだろう。
来年は、その水面下の前哨戦となる。

一方で、横の連携を取り、世界に向けてビエンナーレトリエンナーレ
共同でアピールする取り組みを模索する動きもある。アジアの協調を
すすめる鍵を、現代アートが握っているともいえる。


■止まらない中国のアート・バブル

アジアで現代アートの台風が吹き荒れる中、その〝目〟となるのは
間違いなく、中国だ。
2008年に北京五輪、2010年に上海万博を開催する中国は、現代
アートの世界でも存在感を増している。

今年3月、ニューヨークのオークション、サザビーズで中国人アーティ
スト、張暁剛の絵画に約98万ドルという落札価格がつけられた。さらに
11月には、香港のオークション、クリスティーズで、天安門広場を
描いた作品
が約230万ドルで落札されるという躍進ぶり。
クール・ジャパンとして、海外で注目を集めるアーティスト、村上隆の
絵画が今年5月、100万ドルで落札されたが、張暁剛はその価格を
抜き去った。

張暁剛の作品は、文革によって人生が狂ってしまった元画家の父と、
画家として大成する息子の邂逅を描いた映画「胡同のひまわり」
(2005年、中国)で、作中作品として注目を集めた。
映画の背景となるのは、文革から経済成長を経て、北京五輪で大きく
変貌する街。中国の現代アートの軌跡とも、そのまま重なるようだ。

ここ数年で、北京や上海にはギャラリーや現代アートの美術館が
続々と登場している。経済成長と表裏一体にあるアート市場でも、
中国人アーティストの作品が高く買われ、バブルとでも呼べる状況
だが、07年以降も、北京五輪、上海万博まではその勢いは止まり
そうにない。

ともすれば、アジアを舞台にうごめく政治や経済に現代アートが利用
されているという見方もできるが、現代アートは、同時代を映す鏡でも
ある。利用されるのではなく、内包する矛盾も作品に利用する。
そんな強かさを渦中にあるアーティストたちは求められているのかも
しれない。

カテゴリ: 本・アート  > アート    フォルダ: アート

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コメント(5)

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2006/12/29 19:15

Commented by 佐々木正明 さん

 村上隆さんの作品こそ、クールジャパンに導かれるアーティストの代表格。アニメと現代アートがミックスされた日本のサブカルチャーを想像させる作品だと思います。
 でも、これ、ロシアのチェブラーシカに見えるんだけどなあ。

http://store.lammfromm.jp/product_info.php/products_id/31589?DS-STYLE=5fb502bcb0b7e343284f586a411670a9

 
 

2006/12/29 23:39

Commented by 猪谷千香 さん

村上さんは、戦略的にそのような作品を海外に〝輸出〟して
いらっしゃいますね。

>でも、これ、ロシアのチェブラーシカに見えるんだけどなあ。

あはは。私は最初に見たとき、米国の某人気ネズミに似てるかも?と
思いました。チェブラーシカって、ネズミなんでしょうか???
かわいいですよね。神保町にチェブラーシカ・カフェがあるらしいので
今度行ってみようと思っています!

 
 

2006/12/31 01:20

Commented by seeds さん

猪谷様、こんばんは。

工業的分野と異なり、思想と密接な関係を持つ芸術は、中国にとって両刃の剣ではないかと思うのですが。うまく利用しているつもりが、己の命運を左右する可能性がある、なんてことは考えないのでしょうか。

 
 

2006/12/31 11:05

Commented by 猪谷千香 さん

seeds様

私も同じことを考えました。体制に批判的な作品も出てきているので・・・
なかなか日本では機会がないのですが、中国人のアーティストがどの
ような意識を持っているのか、取材してみたいです。

 
 

2007/11/27 23:13

Commented by イザ! さん

 ルネサンス時代のある著述家が言った。「必要なのは実行力である。それを飾り付けたければ、あとで芸術家にまかせればいい」


 画家が、どうにか自らで食えるようになった、つまり、自立した職業であることが社会に認知されたのは近代に入ってから、もっと正確に言えば、現代に入ってからかも知れない。そのための劣等意識が、未だ、残っている者に、芸術が「主」であり、政治や経済は「従」であるとする歪んだ優越感があるのだろう。


 その歪んだ優越感から、政治・経済=現代アートと対立概念に置き、そして、現代アートが政治や経済に利用されている論を展開しているのだろう。

 
 
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